ビジネスローンとは、法人や個人事業主が事業資金を調達するためのローンであり、利用するには金融機関による審査が必ず実施されます。ビジネスローンの審査で確認されるポイントは、企業の財務状況や事業計画、代表者の信用情報など、さまざまです。審査をスムーズに通過して資金を調達するためにも、審査に落ちる理由や通過するためのポイント、落ちた場合の対処法などを把握しておきましょう。
ビジネスローンとは?
ビジネスローンは、事業資金を目的とした法人・個人事業主向けのローンです。運転資金や設備投資、新規事業の立ち上げなど、事業に関して幅広い用途に利用できます。
主な提供元は、銀行や消費者金融、クレジットカード会社、信販会社などです。各機関によって商品の特徴や審査基準、金利設定などが異なります。
ビジネスローンとカードローンの違い
ビジネスローンとカードローンは、主に資金使途と対象者が異なります。ビジネスローンは事業資金専用で、法人や個人事業主が利用できます。一方、個人向けカードローンは資金使途が自由ですが、事業資金として使うことは認められていません。
以下に主な違いをまとめた表を作成しました。
- | ビジネスローン | カードローン |
---|---|---|
対象者 | 法人・個人事業主 | 主に個人 |
資金使途 | 事業資金のみ | 原則自由 |
総量規制 | なし | あり |
審査基準 | 事業実績・将来性重視 | 個人の信用情報重視 |
審査スピード | 3〜5営業日※ノンバンク系は最短即日 | 最短即日 |
法人がビジネスローンを利用するメリット
法人がビジネスローンを利用するメリットは以下のとおりです。
- 日本政策金融公庫や銀行より融資までのスピードが早い
- 総量規制を気にせずに利用できる
- 担保・保証人なしで申し込める
各メリットを詳しく解説します。
日本政策金融公庫や銀行より融資までのスピードが早い
ビジネスローンは、日本政策金融公庫や一般の銀行融資と比べて、審査から融資実行までのスピードが早いです。
公的金融機関では数週間かかることも多いですが、ビジネスローンなら最短で数日、場合によっては即日融資も可能です。急な支払いや出費に対応できるため、ビジネスチャンスを逃さず事業を展開できます。
総量規制を気にせずに利用できる
ビジネスローンは、個人向けローンとは異なり総量規制の対象外です。総量規制とは、借りすぎを防ぐため、個人の借入総額を年収の3分の1までに制限する規制のことです。しかし、事業用途の融資はこの規制の対象外となります。そのため、ビジネスローンでは年収の3分の1を超える借入も可能です。
担保・保証人なしで申し込める
多くのビジネスローンは、担保や保証人を必要としません。これにより、不動産などの担保がない企業や、個人保証のリスクを避けたい経営者でも利用しやすくなっています。
ただし、法人代表者の連帯保証が求められる場合もあるので、契約内容は慎重に確認しましょう。無担保・無保証人のため、審査はやや厳しくなる傾向がありますが、事業の将来性や収益性を考慮して融資が決定されます。
法人がビジネスローンを利用するデメリット
法人がビジネスローンを利用するデメリットは、以下の3つです。
- 日本政策金融公庫や銀行の融資より金利が高い傾向にある
- 借入限度額が低めに設定されている
- 将来的な融資に響くリスクがある
各デメリットをしっかり把握してビジネスローンを利用するかを検討しましょう。
日本政策金融公庫や銀行の融資より金利が高い傾向にある
ビジネスローンはスピーディーな融資でありますが、その分金利は高めに設定されています。日本政策金融公庫の金利が1〜3%程度なのに対して、ビジネスローンは年5〜15%程度の金利が設定されているケースが多いです。
長期的に資金を調達していく場合、この金利差は大きな負担となりかねないため、慎重に資金計画を立てていく必要があるでしょう。
借入限度額が低めに設定されている
ビジネスローンは、借入限度額が低めに設定されています。多くの場合、数十万円から数百万円程度が上限です。そのため、大規模な設備投資や事業拡大には不十分な場合があります。
一方、日本政策金融公庫や銀行の融資では、数億円単位の融資も可能です。そのため、大きな資金が必要な場合は、ビジネスローンだけでなく、他の資金調達手段も併せて検討する必要があるでしょう。事業規模や資金需要に応じて、適切な融資方法を選択することが重要です。
将来的な融資に響くリスクがある
ビジネスローンを利用すると、将来的な信用に響く可能性があるため、注意しましょう。金利が高いビジネスローンを利用することは銀行にとってはマイナス要素です。
複数のビジネスローンを利用したり、返済が遅れたりすると、企業の信用力が低下し、銀行からの融資や公的融資を受けにくくなるリスクがあります。
また、財務諸表上の負債比率が上がることで、取引先や投資家からの評価にも影響を与えることもあるでしょう。
ビジネスローンを利用する際は、短期的な資金需要だけでなく、中長期的な事業計画や資金計画を踏まえて慎重に判断することが肝要です。
ビジネスローンの審査基準
ビジネスローンでは、複数の基準を基に審査が行われます。ここでは、主な評価基準を見ていきましょう。
経営状況・財務状況
企業の経営状況や財務状況は、ビジネスローンの審査において重要な評価基準です。過去2〜3年分の決算書を基に、売上高や利益率、負債比率などが分析されます。安定した収益力や健全な財務体質が評価されますが、赤字でも成長性が認められれば融資可能な場合もあります。また、キャッシュフローの状況も重視され、返済能力の判断材料となります。
資金使途
借入金の使途も審査の重要な要素です。事業拡大や設備投資、運転資金など、明確で具体的な資金使途が求められます。単なる借り換えや返済資金ではなく、事業の成長や改善につながる使い道であることが望ましいです。
資金使途が明確であり、かつ事業にとって必要性が高いと判断されれば、審査にプラスに働きます。
借入希望額
借入希望額は、企業の規模や財務状況、資金使途との整合性から評価されます。借りすぎは返済リスクを高めますが、かといって必要以上に少額の借入を希望すると、資金が足りなくなってしまうかもしれません。
事業内容や自社の状況に見合った適切な借入額を設定することが重要です。
事業計画
中長期的な事業計画も審査の重要なポイントです。借入金を活用してどのように事業を展開し、どれくらいの期間で収益を上げていくのかという具体的な計画が求められます。
市場分析や競合状況、販売戦略などを踏まえながら、実現可能性の高い計画を立てましょう。
信用情報
自社や代表者の信用情報も審査対象の一つです。過去の借入返済状況や、税金・社会保険料の納付状況などが確認されます。延滞や未払いがあると、審査にマイナスの影響を与える可能性が高くなるため、注意しましょう。
また自社だけでなく、代表者の個人的な信用情報も考慮されることがあるため、自社だけでなく個人としての信用も大切です。各種支払いを期日通りに行う、不要な借入を避けるなどの対策を心がけ、健全な信用履歴を維持しましょう。
ビジネスローンの審査に落ちてしまう理由
ここでは、ビジネスローンの審査に落ちてしまう理由を紹介します。自社が当てはまっていないか、確認してみましょう。
赤字決算・債務超過である
融資担当者は、決算書から返済能力を判断しています。赤字決算は、事業の経費を賄えていない状態であり、事業から返済資金を捻出できていない状態です。とくに、債務超過は会社の資産をすべて売っても借金を返せない状態であり、赤字決算よりも深刻な経営状況とみなされるため、審査通過は厳しくなります。
税金や社会保険料を滞納している
税金や社会保険料の支払いは、企業にとって重要な義務です。審査では、納税証明書の提出を求められることもあり、滞納の有無がチェックされます。
これらを滞納してしまうと、金融機関からは「お金の管理ができていない」「公的な義務を果たせない、信頼性の低い」と見なされてしまいます。
代表者の信用情報に問題がある
法人向けビジネスローンでは、多くの場合、代表者が連帯保証人となります。そのため、審査では代表者個人の信用情報も重要視されます。
もし代表者自身のクレジットカードやローンに延滞があると、「万が一の時に、保証人としての責任を果たせない」と判断されてしまいます。会社の信用を、代表者個人が補完できないため、審査通過は厳しくなります。
事業計画に具体性や現実味がない
融資担当者は、事業計画書を見て、その事業の将来性を判断します。計画に具体性がなく、「こうなったらいいな」という希望的観測ばかりかかれていると、「計画性がない」と見なされてしまいます。
なぜ、その事業で利益が出ると言えるのか。その根拠となる市場の分析や、具体的なアクションプランがなければ、融資担当者を説得することはできません。
申込内容に不備や虚偽がある
申込内容に不備や虚偽があることも、ビジネスローン審査落ちの原因の一つです。電話番号の入力ミスといった、ささいな不備でも審査は遅れてしまいます。ましてや、審査を有利に進めようとして、売上などの数字を偽って申告すれば、その時点で審査は打ち切りとなります。ダブルチェックを怠らず、正確な情報で申し込みましょう。
ビジネスローンの審査に落ちないためのポイント
審査に落ちてしまう理由を理解したところで、次は対策を見ていきましょう。金融機関がどこを見ているのかを踏まえ、審査通過の可能性を少しでも高めるための、具体的なコツを解説します。
赤字の理由と改善計画を明確に説明する
金融機関は、赤字という事実だけでなく、その中身を見ています。赤字が単なる業績不振なのか、あるいは将来のための先行投資なのかは大きな違いです。「なぜ赤字になったのか」という理由と「これからどう黒字化するのか」という改善策を具体的に説明することで、計画性のある経営姿勢をアピールできます。
必要最低限の希望額で申し込む
ビジネスローンを申し込む際は、「この金額なら確実に返済できる」と自信を持って返済できる金額にしましょう。
希望額が大きすぎると、融資担当者は「本当に返済計画は大丈夫か?」と事業計画全体の信頼性に疑問を抱きます。現実的な返済計画に基づいた希望額を提示することが、審査通過の可能性を高める重要なポイントです。
ビジネスローンの審査に落ちた場合の対処法
ビジネスローンの審査に落ちてしまっても、まだ諦める必要はありません。金融機関によって審査基準は異なるため、一つの結果がすべてではないのです。ここでは、次の資金調達を成功させるために、審査に落ちた後に取るべき具体的な対処法を紹介します。
審査落ちの理由を可能な範囲で確認する
審査に落ちた場合、すぐに次の申し込みをするのではなく、まずは原因を考えることが大切です。
金融機関は通常、詳しい理由を教えてくれません。それでも、「今後の参考に、どのような点が不足していたか」と尋ねてみましょう。次の審査につながる情報が得られるかもしれません。
別のビジネスローンに申し込む
一つの金融機関に断られたからといって、諦める必要はありません。ビジネスローンの審査基準は、会社によって様々です。ある会社が重視するポイントと、別の会社が重視するポイントは異なります。
特に、銀行系のビジネスローンに落ちた場合は、審査基準がより柔軟なノンバンク系のビジネスローンに申し込むことで、審査に通る可能性があります。
ファクタリングなど融資以外の資金調達を検討する
融資の審査に通らなかった場合、借入以外の方法に目を向けるのも一つの手です。
例えばファクタリングは、自社の請求書(売掛債権)を売却する取引です。融資とは審査の視点が全く異なり、売掛先の支払い能力が重視されます。そのため、自社の財務状況に不安がある場合でも、資金を調達できる可能性があります。
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ビジネスローンの利用の流れ
ここでは、ビジネスローンを利用する際の流れは、主に以下の4つのステップで進みます。
STEP1:申し込み
公式サイトのフォームなどから、必要な情報を入力して申し込みます。
STEP2:必要書類の提出
担当者の案内に従い、決算書や本人確認書類などをデータで提出します。
STEP3:審査
提出された書類を基に、金融機関が審査を行います。
STEP4:契約・入金
審査通過後、契約手続きを完了させると、指定の口座に資金が振り込まれます。
ビジネスローン審査の必要書類
ビジネスローン審査で必要な書類は、法人か個人事業主かで異なります。
- 法人の場合
- 代表者の本人確認書類
- 決算書(2期分)
- 会社の登記簿謄本
- 個人事業主の場合
- 本人確認書類
- 確定申告書(2年分)
その他、事業内容を説明する資料などを求められることもあります。事前に公式サイトなどで確認しておきましょう。
ビジネスローンの審査に関するQ&A
ここでは、ビジネスローンに関してよくある質問に回答していきます。
審査が甘いビジネスローンはある?
審査が甘いとされるビジネスローンはありますが、必ずしも審査を通過できるわけではありません。
とはいえ、銀行系のビジネスローンは審査が厳しく、ノンバンク系は比較的審査が通りやすい傾向にあります。
ただし、審査では、企業の財務状況や事業計画、返済能力などが総合的に評価されます。審査が通りやすいローンを探すよりも、自社の強みをアピールできる事業計画を立てることが重要です。
赤字経営でもビジネスローンは利用できる?
赤字経営でもビジネスローンを利用することは可能です。金融機関は、単に現在の財務状況だけでなく、今後の事業計画や成長性も重視します。
赤字の理由が一時的なものか、今後改善の見込みがあるかなどを説明できれば、赤字経営でもビジネスローンは利用できる可能性が高まります。
即日で利用できるビジネスローンはある?
即日で利用できるビジネスローンは存在しますが、数は限られています。ノンバンク系の金融機関が提供するオンライン完結型のビジネスローンで、最短即日での融資が可能です。
ただし、即日融資を受けるには、必要書類をすべて揃え、早い時間帯に申し込む必要があります。また、即日融資対応のローンは金利が高めに設定されていることが多いので注意が必要です。急ぎの資金調達には便利ですが、計画的な借入を心がけましょう。
複数社に同時に申し込むのは避けるべきですか?
短時間に多数のビジネスローンに申し込むのは避けましょう。ローンへの申込履歴は信用情報機関に約6ヶ月間記録されます。金融機関は、複数の申込履歴を見ると「相当お金に困っているのでは?」と判断し、貸し倒れのリスクを警戒します。これが、本来なら通るはずだった審査も通らなくなる「申し込みブラック」という状態です。比較検討は重要ですが、2〜3社に絞って相談するのが賢明でしょう。
審査に落ちる理由を理解し、ビジネスローンを賢く活用しましょう!
ビジネスローンを申し込む際には、審査で重視されるポイントを把握したうえで、自社の財務状況や事業計画について整理しておきましょう。
また、ビジネスローンの申し込みでは、金利や返済条件を十分に比較し、無理のない計画で申請するようにしてください。
もし、融資の審査に不安がある場合や、より迅速な資金調達が必要な場合は、ファクタリングなど他の資金調達方法も検討してみましょう。もし、どの方法が自社に最適か分からない、あるいは準備に不安がある場合は、「Bankme」で専門家に相談するのも一つの手です。複数のプロから、最適な提案を受けられます。