売掛金は「入金されて初めてキャッシュになる」性質上、入金遅れ・相殺・減額(値引き)などのトラブルが起きると、資金繰りに直撃します。さらに、すでにファクタリングを利用している(または利用予定)場合は、「誰に・いくら・いつ入る前提か」が崩れるため、対応を誤ると追加費用や信用低下につながることもあります。
この記事では、売掛金トラブルが起きたときにファクタリング利用者が取るべき実務対応を、ケース別に整理します。
トラブル時にまず確認すべきは「償還あり/なし」
売掛金に入金遅れや相殺、減額などのトラブルが発生したとき、最初に確認したいのが「そのファクタリングが償還あり(リコース)か、償還なし(ノンリコース)か」です。ここが違うだけで、入金が不足した場合に“誰が負担するか”の前提が変わり、次に取るべき対応も変わります。
- 償還なし(ノンリコース)のファクタリング
原則として、売掛先の支払い不能などによる貸倒れリスクはファクタリング会社側が負う設計になりやすいタイプです。トラブルが起きても、まずは事実関係と記録を整理し、ファクタリング会社と連携して回収方針を詰める流れになります。 - 償還あり(リコース)のファクタリング
入金が無い/不足する場合に、利用者側へ買戻しや不足分の支払いを求められるなど、利用者の負担が発生しやすいタイプです。トラブルが長引くほど資金繰りへの影響が大きくなるため、売掛先への確認と並行して、早い段階でファクタリング会社へ共有し、追加の資金手当も含めて現実的な着地点を探る必要があります。
なお、パンフレットや説明では「償還あり/なし」と書かれていても、実際にトラブルが起きたときに誰が負担するか、連絡義務、期限、費用、違約金などは、契約条項で決まります。トラブル発生時は、ファクタリング契約書のうち「支払不能」「相殺」「減額」「遅延」などの取り扱い(報告義務、期限、費用負担、違約金等)を真っ先に確認し、対応手順・行動を誤らないことが重要です。
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トラブルのパターン別に原因と対応を解説
売掛金のトラブルは「入金されない」という結果は同じでも、原因によって初動が変わります。特にファクタリングを利用している場合は、入金予定が崩れると送金・精算にも影響するため、状況に合わせて手順を切り替えることが重要です。
ここからは、現場で起きやすいトラブルを「入金遅れ」「相殺」「減額」の3つに分けて、まず原因の典型を整理し、そのうえで最初に取るべき対応をケース別に解説します。
ケース1:入金遅れ(支払期日に入らない)
よくある原因
- 売掛先の経理処理遅れ(締め処理・振込漏れ)
- 検収遅れ/請求書差戻し
- 売掛先の資金繰り悪化(実質的な支払不能の前兆)
ファクタリング利用時に起きやすいこと
- 2社間ファクタリング:売掛先は通常どおり利用者に入金 → その後に利用者がファクタリング会社へ送金
→ 入金が遅れると、送金も遅れ、状況によっては遅延損害金等の論点が出ます - 3社間ファクタリング:売掛先がファクタリング会社へ直接入金
→ 入金確認ができない=即座にトラブルとして顕在化しやすい
すぐやるべき対応(実務)
- 売掛先へ支払状況の確認(振込予定日・理由・担当者名)
- 記録を残す(メール・チャット・通話メモ)
- ファクタリング会社へ早期連絡(黙って期日超過が一番まずい)
- 「いつ入るか」が固まったら、社内の資金繰り表を更新し、追加の資金手当が必要か判断
ポイント:入金遅れは“時間が解決する”こともありますが、ファクタリングでは「報告遅れ」が別の問題を生むことがあります。遅れが発覚した時点で共有するのが安全です。
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ケース2:相殺(売掛先が別債権とぶつけて減額してくる)
相殺が起きる典型
- 「返品・クレーム費用」「立替金」「過去の未払い」「違約金」などを理由に、売掛金から差し引く
- 継続取引で、請求と支払いを“まとめて精算”する運用
ファクタリング利用時の注意点
相殺が入ると、売掛金の額自体が変わるため、ファクタリングで譲渡した債権の回収額が不足します。ここで重要なのは、
- 相殺が契約上正当か(根拠条項・合意の有無)
- 相殺の対象が当該債権に対して可能か(相殺禁止特約、債権譲渡後の扱い 等)
- 相殺の主張がいつ出たか(譲渡前からの争いか、譲渡後に突然出たか)
すぐやるべき対応
- 売掛先から「相殺の根拠資料」を取り寄せる(請求書、覚書、クレーム報告書など)
- 事実関係を整理(いつ・誰が・何に合意したか)
- ファクタリング会社へ連絡し、条項に沿って協議
- 相殺が長引く場合、回収見込みの再評価(追加の資金繰り手当、別債権の活用など)
ポイント:相殺は「売掛先の都合」で一方的に行われやすいですが、ファクタリングでは“争いのある債権”扱いになり、次回以降の利用条件に影響することがあります。初動の証跡が大事です。
ケース3:減額(値引き・出来高調整・検収差異)
よくあるパターン
- 出来高が想定より少ない(建設・制作・請負で多い)
- 検収NGで再提出/手直しが入り、請求が通らない
- 値引き合意が口頭で進み、請求額が変わる
ファクタリング利用時に起きやすいこと
減額=入金額不足なので、ファクタリングの回収計画が崩れます。特に、請負・出来高系は「請求=確定債権」になっていないことがあり、トラブルになりやすい領域です。
すぐやるべき対応
- 減額の理由を書面で確認(検収結果、出来高表、合意の記録)
- 請求の正当性を再点検(契約、仕様、成果物、納品日)
- ファクタリング会社へ共有し、対応方針(不足分の扱い)を協議
- 次回以降は「検収完了後に請求→ファクタリング」の順に切り替える等、運用を見直す
トラブル発生時のチェックリスト(最短で動く)
- 事実:いつ・いくら・何が起きたか(遅れ/相殺/減額)
- 証跡:メール、請求書、契約書、検収資料、通話メモ
- 契約:ファクタリング契約の「遅延・争い・減額」条項
- 連絡:売掛先/ファクタリング会社(早め)
- 資金繰り:不足が出るか、代替手当が必要か
予防策:トラブルを“起こさない売掛金”に寄せる
ファクタリングの成否は、売掛金の「確実性」でほぼ決まります。以下の運用が効きます。
- 請求前に「検収完了」を確定させる(出来高・請負は特に)
- 返品・値引き・相殺のルールを契約に明記する
- 請求書差戻しを防ぐチェック(宛名・締日・注文番号・添付書類)
- 売掛先ごとの“遅れ癖”を管理し、ファクタリングに回す債権を選別する
よくある質問
Q. 入金遅れが出たら、ファクタリング会社に必ず連絡が必要?
契約によりますが、実務上は早期連絡が無難です。黙っていると「報告義務違反」や信頼低下につながることがあります(条項確認が前提です)。
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Q. 相殺や減額が起きたら、次回のファクタリングは使えなくなる?
一発で不可になるとは限りませんが、債権の性質や頻度によっては条件が変わることがあります。だからこそ、初動で「正当性」と「証跡」を固めるのが重要です。
まとめ
売掛金トラブル(入金遅れ・相殺・減額)は、資金繰りだけでなく、ファクタリングの精算・送金・次回利用条件にも影響します。特に、入金額や入金日がズレると「予定どおり回収できる売掛金」という前提が崩れるため、対応の遅れがそのまま追加負担や信用面のリスクにつながりやすくなります。
トラブル時にまず押さえたいのは、償還あり/なしの確認です。これにより「誰が負担する前提か」が決まり、取るべき初動(売掛先への確認、ファクタリング会社への連絡、資金手当の要否)が変わります。あわせて、ファクタリング契約書のうち「支払不能」「相殺」「減額」「遅延」の条項(報告義務、期限、費用負担、違約金など)を確認し、契約に沿って動くことが重要です。また、再発防止の観点では「検収完了後に請求→ファクタリングに回す」「相殺・値引きルールを契約に明記する」「売掛先ごとの遅れ傾向を管理して債権を選別する」といった運用改善が挙げられます。売掛金トラブルはゼロにできなくても、起きたときの被害を最小化する設計を心がけましょう。



