事業の成長のため、資金調達を検討している経営者の方もいるのではないでしょうか。資金調達は事業を力強く後押ししますが、リスクも存在します。
とはいえ、資金調達をしないことも成長の機会を逃すリスクとなり得ます。リスクを闇雲に恐れるのではなく、正しく理解した上で、必要な対策を講じることが大切です。
この記事では、資金調達の代表的な方法である「負債」「資本」「資産」の3つの手段別に、具体的なリスクを解説。さらに、資金調達をしない場合に生じるリスクや、回避するための7つの対策を紹介します。
資金調達のリスクを手段別で解説
資金調達の方法は、大きく「負債(デットファイナンス)」「資本(エクイティファイナンス)」「資産(アセットファイナンス)」の3つに分けられます。それぞれ性質が異なるため、リスクの種類も異なります。
負債(デットファイナンス)のリスク
金融機関からの融資(借入)が代表例です。他人資本を借り入れるため、様々な義務や制約が伴います。主なリスクは以下のとおりです。
内部リンク「資金調達 融資」
返済義務と利息の負担
融資の返済は、事業者にとって精神的・財務的負担となり得ます。特に売上が変動しやすい事業の場合、業績に関わらず毎月決まった額を返済し続けることに、プレッシャーを感じるものです。また、元本に加えて利息の支払いも発生するため、借り入れた金額以上の資金を準備する必要がある点も忘れてはいけません。
こういった負担を現実的に管理するには、借入前に綿密な返済計画を立てることが不可欠でしょう。
「売上が30%減少した場合でもキャッシュフローは持つか」「利息を含めた総返済額はいくらか」など、具体的な数値を把握しておくことで、将来のリスクに備えることができます。
担保や個人保証によるリスク
融資の条件として、不動産などの担保や、経営者自身が連帯保証人となる個人保証(経営者保証)を求められることがあります。
万が一返済不能に陥った場合、担保とした資産を失ったり、経営者が私財を投じて返済しなければならなくなったりするリスクがあり、事業の失敗が個人の生活を直接脅かす可能性があります。
信用情報への影響
融資の返済状況が将来の審査にどう影響するか不安に思う方も多いでしょう。融資を利用すると、履歴が信用情報機関に記録され、金融機関全体で共有されます。
特に返済の遅延は、将来の資金調達を著しく困難にする、いわゆる金融事故として扱われるため、注意が必要です。
資本(エクイティファイナンス)のリスク
新株発行による増資(第三者割当増資など)が代表例です。投資家から出資を受ける形で、返済不要の自己資本を調達します。主なリスクは以下のとおりです。
経営権の希薄化
株式を新たに発行し、第三者である投資家が引き受けるということは、会社の所有権の一部を譲渡することを意味します。
出資がもたらす経営権の希薄化は、創業者にとって大きな不安要素です。株式の放出によって、重要な意思決定に株主の承認が必要になる場面も出てくるでしょう。
出資を受ける前に専門家を交え、自社が許容できる持株比率のラインを明確に定めておくことが重要です。
株主からの経営への関与
特にベンチャーキャピタル(VC)などから出資を受けた場合、株主として経営に積極的に関与されることが一般的です。株主は利益の最大化を求めるため、事業方針や役員人事など、経営の重要な意思決定に対して意見したり、時には反対したりする可能性があります。これにより、創業者が思い描いていたビジョンとの間にズレが生じるリスクがあります。
ミスマッチを防ぐには、契約前に担当者と対話を重ね、ビジョンや価値観を共有できる相手かを見極めることが不可欠です。お金の条件だけでなく、「誰と組むか」を慎重に選ぶ必要があります。
配当金の負担
利息のような支払い義務はありませんが、利益が出た際には株主に対して配当金を支払うことが期待されます。
多額の配当は、事業へ再投資するための内部留保を減少させることになり、長期的な成長の足かせとなる可能性があります。
資産(アセットファイナンス)のリスク
自社が保有する資産(売掛債権や不動産など)を現金化したり、担保にして資金を調達したりする方法です。不動産を担保とした融資やファクタリングが代表例です。主なリスクは以下のとおりです。
資産を失う可能性
アセットファイナンスを利用する際は、その資産が持つ事業上の重要性を改めて考える必要があります。返済が滞れば、その資産の所有権を失うことになるからです。
特に、事業運営に不可欠な資産を担保にした場合は、事業継続が困難になるリスクがあります。万が一手放しても事業への影響が少ない資産を選ぶ、返済計画に十分な余裕を持たせるなど、対策を徹底しましょう。
割高な手数料
ファクタリングは、迅速に資金を調達できる利便性の高い方法ですが、その反面、融資の金利に比べて手数料が割高になる傾向があります。
手数料の高さが収益を圧迫し、繰り返し利用することでかえって資金繰りを悪化させてしまうリスクがあるため、注意が必要です。あくまで短期的なつなぎ資金として慎重に利用しましょう。
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資金調達を検討しないリスクもある
ここまで資金調達に伴うリスクを解説しましたが、一方で「資金調達をしない」ことにもリスクがあります。リスクを恐れるあまり、必要な投資をためらっていると、以下のような事態に陥る可能性があります。
- 競争力の低下・市場シェアを失うリスク
- 設備やシステムが老朽化し、生産性が低下するリスク
- 優秀な人材を確保できなくなるリスク
- 資金繰りが悪化し、黒字倒産に陥るリスク
資金調達においてリスクは付きものと捉えた上で、調達するリスクとしないリスクを天秤にかけ、自社にとって最適な判断を下すことが重要です。
資金調達のリスクを回避するための7つの対策
資金調達のリスクは、適切な対策を講じることでコントロールできます。以下の7つのポイントを必ず押さえましょう。
1.資金調達の目的と必要額を明確にする
「なんとなく不安だから」といった曖昧な目的での借入は、過剰な利息負担を招きます。リスクを避けるには、「何に、いくら必要か」を具体的に洗い出しましょう。
設備投資なら見積書、運転資金なら固定費の3ヶ月分など、明確な根拠を持って必要額を算出します。借入額が最適化されるだけでなく、一つ一つの金額に客観的な根拠を示すことで、計画全体の説得力が格段に増します。
2.現実的で説得力のある事業計画書を作成する
金融機関は、事業計画書を通して「その事業は本当に利益を生み、返済原資を確保できるか」を冷静に見ています。
熱意は重要ですが、客観的な根拠のない計画では、金融機関からの信頼を得ることはできず、希望する条件で資金調達することはできません。
市場分析や競合調査に基づき、「なぜこの事業が成功するのか」という論理的な道筋を示すことが不可欠です。具体的で、誰が読んでも納得できるレベルの計画を練り上げることが重要です。
3.自社の成長ステージに合った方法を選ぶ
資金調達で起こりがちなのが、自社の状況と合わない方法を選んでしまうミスマッチです。自社の段階を無視して選んでしまうと、審査に落ちる、あるいは不利な条件を飲むといったリスクにつながりかねません。
このリスクを避けるには、自社の成長ステージを客観的に認識し、適した手段を選ぶことが不可欠です。創業期なら公的融資、成長期ならVCなど、段階に応じた資金調達を検討しましょう。
4.複数の選択肢を比較検討する
資金調達を急ぐあまり、最初に見つけた一つの選択肢に安易に決めてしまうのはリスクです。提示された条件が、本当に自社にとって最適なのかを判断する材料がほかにないからです。
必ず複数の金融機関や専門家から話を聞き、提案を比較検討する手間を惜しまないことが重要です。金利や手数料、契約条件などを慎重に比較検討することで、自社にとって有利な条件を引き出すことができます。
5.契約書の内容を十分に理解する
専門用語が多く並ぶ契約書を、理解しないまま署名するのは大きなリスクです。契約書には、金利だけでなく、繰り上げ返済時の手数料など、将来の経営を縛る重要な内容が記載されています。
内容を十分に理解せずに署名・捺印することは絶対に避けましょう。署名前に全ての条項に目を通し、不明な点は必ず専門家に確認することが不可欠です。
6.出口戦略(返済・EXIT)までを考えておく
資金調達する前に、未来のどの時点で、どのように返す(還元する)かを明確にする必要があります。
この出口戦略が曖昧だと、計画そのものの実現性が疑われかねません。融資なら「いつまでに完済する」、出資なら「何年後にどのようなEXITを目指す」というゴールを具体的に設定することが、金融機関や投資家からの信頼を得る上で重要です。
7.専門家の意見を聞く
資金調達を成功させるには、信頼できる専門家をパートナーにすることがおすすめです。経営者自身が事業のプロであるように、資金調達にもその道のプロがいます。
自分一人では気づけないリスクを指摘してくれたり、より良い条件を引き出すための交渉をサポートしてくれたりするでしょう。
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資金調達のリスクに不安を感じる方は「Bankme」を活用した専門家への相談がおすすめ
ここまで解説したように、資金調達には様々なリスクが伴い、対策も多岐にわたります。これらの複雑な課題を経営者一人が抱えるのは、非常に困難です。そんなときにおすすめなのが、「Bankme」です。
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資金調達を検討する際は事前にリスクを把握しておくことが大切
資金調達は、事業の成長を加速させるための強力な手段です。
大規模な設備投資や新規事業の立ち上げを可能にするなど多くのメリットがある一方、融資であれば返済義務、出資であれば経営への関与といった、必ず理解しておくべきリスクも存在します。
資金調達を成功させるには、これらのリスクを事前に把握し、自社の状況に合った最適な方法を選択することが重要です。資金調達のリスク管理に不安があれば、「Bankme」にご相談ください。元金融機関出身者などの専門家が、貴社の状況を分析し、リスクを最小限に抑えるための最適なプランを提案します。安全な資金調達で、事業の成長を実現しましょう。



