資金調達に欠かせない事業計画書。中でも、金融機関や投資家に向けて、必要な資金額や使途、事業の将来性などを具体的にまとめた「資金調達計画」は、資金調達の成否を左右する重要な要素です。
この記事では、資金調達計画の定義や重要性、成功させるためのコツ、金融機関と投資家で異なる評価ポイントなどを解説します。
資金調達計画とは?金融機関や投資家が重視する理由
資金調達計画とは、資金調達を成功させるために作成する計画のことです。事業に必要な資金額や使途を具体的に示すだけでなく、その資金をどうやって利益に繋げ、返済・回収するのかという道筋を客観的な数字で示す役割があります。
金融機関や投資家は、この計画を見ることで、事業の将来性や経営者の計画遂行能力を判断します。そのため、大企業だけでなく、中小企業や個人事業主であっても、質の高い計画を用意することが、円滑な資金調達には不可欠なのです。
資金調達計画と事業計画の違い
資金調達計画と事業計画は混同されがちですが、その目的と範囲が異なります。事業計画は事業の目的やコンセプト、経営戦略といった、事業の全体像を示す総合的な計画です。
一方、資金調達計画は、事業計画書の一部であり、「なぜ資金が必要か」「いくら必要か」「どうやって返済するのか」といった、お金の調達に特化した部分を指します。
なぜ中小企業の資金調達は難しいのか?
中小企業が大企業に比べて資金調達に苦労する理由は、「信用力の不足」「担保の欠如」などが理由として挙げられます。金融機関や投資家から見れば、貸し倒れや投資失敗のリスクが高いと判断されがちです。
しかし、その懸念材料を払拭し信頼を得るために、大きな力となってくれるのが事業計画書です。優れた計画書は、信用の不足を補い、事業の将来性を説得力をもって示すことができます。
事業計画書で対象となる主な資金調達の種類
事業計画書でアピールすべき内容は、資金調達の種類によって異なります。以下、代表的な3つの種類を理解しておきましょう。
- 融資(デットファイナンス): 金融機関からの借入
- 出資(エクイティファイナンス): 投資家からの出資
- 補助金・助成金: 国や自治体からの給付
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資金調達計画を成功させるための4つのコツ
説得力のある事業計画書を作成し、資金調達のプロセス全体を成功に導くためには、押さえておくべき点があります。
「なぜ、いくら必要か」資金の目的と使途を明確にする
資金調達計画において、「なぜ、いくら必要なのか」資金の目的と使途を、具体的かつ正確に伝えることが重要です。
「事業拡大のため」「運転資金として」といった抽象的な表現では、資金提供者はその妥当性を判断できません。
「新規顧客獲得のためのWeb広告費として300万円」「生産能力を2倍にする最新設備導入費として500万円」というように、客観的な根拠(見積書など)に基づいた具体的な数値で示す必要があります。
希望的観測を捨て、無理のない現実的な計画を立てる
資金調達計画は、楽観的すぎても、悲観的すぎてもいけません。「3年後には売上10億円」といった希望的観測を語るだけでは、資金提供者は「計画の詰めが甘い」と判断します。
市場データや過去の実績、具体的な営業戦略に基づいた、実現可能性の高い現実的な計画であることが、信頼を得る上で不可欠です。また、融資を受ける場合は、返済計画も同様に、無理のない範囲で設定することが重要です。
調達から実行までのスケジュールを逆算して動く
資金調達は、申し込みから入金まで数ヶ月単位の時間がかかることも珍しくありません。
補助金の応募期間や融資の審査期間などを考慮し、「いつまでに資金が必要で、そのためには、いつから動き出すべきか」という全体的なスケジュールを立てましょう。
「来月の支払いのため」といった短期的な資金繰りのために、長期的な視点が必要な出資交渉などを行うのは、典型的な失敗パターンです。時間軸を正しく理解し、計画的に行動することが求められます。
専門家のサポートを戦略的に活用する
資金調達は、それぞれ高度な専門知識を要します。補助金の複雑な申請書作成を社会保険労務士や行政書士に依頼したり、投資家との面談に資金調達コンサルタントに同席してもらったりと、専門家の力を戦略的に活用しましょう。
専門家という第三者の視点を入れることで、自社だけでは気づけないアピールポイントや、交渉の落としどころが見えてくることがあります。
提出先別!資金調達計画の考え方とポイント
資金調達計画書は、提出する相手によって評価されるポイントが全く異なります。相手に合わせたアピールが不可欠です。
銀行融資で評価されるポイント:「返済能力」と「堅実性」
銀行などの金融機関が重視するのは、「貸したお金が、利息と共に、計画通りにきちんと返済されるか」という点です。
そのため、事業の新規性や成長性よりも、事業の安定性、収益の確実性、そして経営者の堅実な人柄が評価されます。
事業計画書では、実現可能性の高い、地に足のついた売上計画と、キャッシュフロー計算書に基づいた確実な返済計画を示すことが重要です。過去の実績や、担保・保証となる資産があれば、さらに信頼性は高まります。
投資家(出資)向けで評価されるポイント:「成長可能性」と「出口戦略」
エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)が重視するのは、「投じた資金が、将来何十倍、何百倍になって返ってくるか」という高いリターン(キャピタルゲイン)です。
そのため安定性よりも、市場を大きく変える可能性を秘めた成長戦略が高く評価されます。また、将来的にIPO(株式上場)やM&A(事業売却)によって、投資家が利益を確定できる「出口戦略(EXIT)」まで描けているかも、重要な判断基準となります。
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説得力のある資金調達計画書を自社だけで作成し、適切な資金提供者を見つけ出すのは、非常に時間と手間がかかる、難易度の高い作業です。その課題を解決するのが、資金調達相談サービス「Bankme」です。
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資金調達計画に関する質問
最後に、資金調達計画に関する質問に答えていきます。
資金調達計画の作成には、どれくらい時間がかかりますか?
事業の規模や複雑さによりますが、ゼロから市場調査や財務計画の策定を始める場合、1ヶ月〜3ヶ月程度の期間を見ておくのが一般的です。テンプレートを活用し、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、時間を短縮できます。
複数の資金使途を、同じ資金調達計画に入れて良いですか?
問題ありません。「設備投資に〇〇円、運転資金に△△円」といったように、複数の使途をまとめて申請するのが一般的です。
ただし、それぞれの使途ごとに、なぜその金額が必要なのか、具体的な根拠(見積書など)を示す必要があります。
資金調達計画を立てないことでどのようなデメリットがありますか?
計画がないままでは、金融機関や投資家から具体的な検討の対象と見なされないでしょう。
それだけでなく、日々の経営も場当たり的になり、いつの間にか資金がショートするといった、深刻な経営リスクを招くことにも繋がります。
資金調達計画の作成は、誰がすべきですか?専門家に頼ったほうが良いですか?
計画の骨子は経営者自身が作るべきですが、財務計画の策定や、金融機関向けの体裁を整える作業は、専門的な知識が必要です。
「Bankme」のようなサービスを活用し、資金調達の専門家に相談しながら作成することで、審査通過の可能性を高めることができます。
資金調達にはどのような例がありますか?
融資(日本政策金融公庫、制度融資など)、出資(エンジェル投資家、VCなど)、補助金・助成金、ファクタリング、クラウドファンディングなど、多様な方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社に合った方法を選ぶことが重要です。
まとめ:資金調達計画は資金調達の成功確率を高めるもの
本記事では、資金調達の成否を左右する資金調達計画について解説しました。資金調達計画とは、金融機関や投資家に向けて事業の価値を伝えるための計画のことであり、企業の規模やステージを問わず、資金調達を目指す上で不可欠と言えます。
計画の作成は、自社の強みと課題を再認識する絶好の機会です。もし、その過程で「客観的なアドバイスが欲しい」「専門家の視点が欲しい」と感じたら、いつでも「Bankme」がサポートします。一人で悩まず、お気軽にご相談ください。



