事業を営む上で避けて通れない資金繰りの問題。企業の成長段階や経済環境の変化によって、以前は問題なかった資金繰りが急に厳しくなることも珍しくありません。
「売上は増えているのに現金が足りない」「取引先の支払いサイトが長くて厳しい」など、資金繰りの課題は様々な形で現れます。
こうした資金繰りの問題は、適切な対策を講じれば改善できます。この記事では、資金繰りが厳しい状況を打開するための具体的な方法や資金繰りが厳しい会社に見られる特徴、NG行動などを解説します。
資金繰りが厳しい状況を打開するためにできる対策
それでは、資金繰りが厳しい状況を打開するためにできる対策を複数見ていきましょう。
1.入金を早める
資金繰りを改善するためには、まず入金のスピードを上げることが効果的です。売上金の回収を早めて手元資金を増やせば、資金繰りを改善できます。
売掛金の早期回収に取り組む
取引先に依頼して、できるだけ支払いの前倒しをお願いしましょう。特に金額の大きな売掛金から優先的にアプローチするのが効果的です。
通常、取引時に決めた支払期日は守るべきものであり、簡単に変更できるものではありません。
しかし、資金繰りの厳しさを率直に伝えれば、協力してもらえる可能性も高まります。早期入金の場合に少額の値引きを提案するなど、取引先にもメリットがある交渉を検討することが大切です。
ファクタリングを活用する
ファクタリングを活用するのも一つの方法です。ファクタリングは、まだ入金されていない売掛金を現金化する方法です。
ファクタリング会社の審査はスピードが早く、最短即日で現金化できます。融資と異なり借入にはならないため、財務バランスを崩さず短期の資金調達が可能です。
ただし、ファクタリング会社によっては手数料が高いこともあり、資金繰りが改善しないと、資金繰りを圧迫するリスクがあります。資金繰りが厳しい状況ではなるべく手数料が低いファクタリングを短期で利用するのがおすすめです。
信頼できるファクタリング会社を選定し、手数料率や契約条件を十分に確認した上で利用しましょう。
ファクタリング一括申請サービス「Payなび」なら、複数のファクタリング会社に一度に申し込みができ、時間と手間を省けます。複数の会社の手数料を気軽に比較検討できるので、より低い手数料率の会社を選べます。
2.支払いを調整する
支払いのタイミングを調整することでも、一時的な資金不足を乗り切ることができます。
支払いサイトの延長交渉を行う
仕入先や外注先に対して、支払期日の延長について相談してみましょう。支払期日が延長できれば、キャッシュフローにゆとりを持たせられます。
しかし、取引先にとって負担になることもあるため、一方的な依頼は避け、双方にとって納得できる条件を提案することが大切です。
請求書カード払いに切り替える
請求書カード払いを活用するのも1つの方法です。請求書カード払いは、請求書の支払いを現金払いからクレジットカード払いに切り替えることで、実質的に支払いを1〜2ヶ月先送りにできるサービスです。
具体的な流れとしては、請求カード払いのサービス業者に対してクレジットカードで決済します。取引先の支払いに関しては、サービス業者が立て替えて支払ってくれるため、カード決済の引き落とし日までの期間、資金を手元に残しておけます。
「カード払いくん」の請求カード払いでは、最大60日間の支払い期間を延長することができ、資金繰りの改善に役立ちます。
Webで完結する簡単な手続きで、最短即日の振込みに対応しており、審査や書類提出は不要です。請求書をアップロードし、カード情報や振込先を入力するだけで利用できます。
3.資産を整理する
資産を現金化することで、資金繰りの改善に直結します。必要最低限の資産に絞り込み、余剰資産を有効活用しましょう。
過剰在庫を減らす
倉庫に眠っている過剰在庫や長期滞留品を特価販売や在庫処分セールで現金化しましょう。多少利益が出なくても、資金化することが優先です。在庫は動かないお金であり、流動化させることで資金繰りが改善します。
また、今後は適正在庫を維持するために発注方法や在庫管理の仕組みを見直し、過剰在庫を生み出さない体制づくりも重要です。
遊休資産を売却する
使用頻度の低い機械設備、社用車、オフィス家具など、事業に直接影響しない資産の売却を検討しましょう。フリマアプリやオークションサイトを活用すれば、比較的短期間で現金化できます。
また、不要なゴルフ会員権や保有株式なども売却対象として検討するとよいでしょう。遊休不動産がある場合は、売却だけでなく賃貸に出すことも選択肢の一つです。
4.外部からの資金調達で改善する
自社だけでの資金繰り改善に限界がある場合は、外部から資金を調達することも検討しましょう。状況に合わせた資金調達方法を選ぶことが大切です。
補助金・助成金を検討する
国や地方自治体が実施している補助金や助成金制度を活用しましょう。「ものづくり補助金」や「小規模事業者持続化補助金」など、業種や企業規模に応じた様々な制度があります。
申請には条件があり、準備期間も必要ですが、返済不要な資金として非常に有効です。
ただし、補助金・助成金が原則として後払いである点に注意が必要です。自社で費用を支出し、事業完了後に申請して交付を受ける仕組みのため、喫緊の資金繰り改善には直接つながりません。
中長期的な視点で計画を立て、補助金・助成金が交付されるまでの資金も確保しておく必要があります。
ビジネスローンを活用する
ビジネスローンは、法人や個人事業主が利用できる事業性融資です。運転資金や設備投資、新規事業の立ち上げなど、様々な用途に活用できます。総量規制の対象とならず、年収の3分の1を超える借入も可能です。
公的融資や銀行融資よりも審査スピードが早く、最短で申込当日に融資を受けられるサービスもあります。ただし、スピード重視の分、金利が高めに設定されていることが多く、返済計画をしっかり立てた上で利用することが重要です。
5.既存の負債を整理する
すでに借入がある場合は、返済負担を軽減する方法を模索しましょう。金融機関との交渉や借入の組み換えで、月々の返済額を減らすことができます。
返済条件の見直し(リスケジュール)
金融機関で使われるリスケジュールは、融資の返済条件を見直すことです。具体的には以下のような条件を変更します。
- 一定期間、月額返済額を減らす
- 返済期間を延長する
- 元本払いを据え置きする
金融機関としても取引先が倒産するよりも、返済条件を変更して継続的に返済を受けるほうがメリットがあります。ただし、債務や利息がなくなるわけではないので、資金繰り悪化の原因を根本的に解決しなければいけません。
リスケジュールを検討する際は、現状の資金繰り状況と今後の見通しを示す経営改善計画を作成し、金融機関に提出しましょう。具体的な数字と実現可能な計画があれば、金融機関も前向きに検討してくれるケースが多いです。
借入の一本化
複数の金融機関から借入がある場合は、借入の一本化があります。
たとえば、A社で100万円、B社で150万円、C社で80万円と借りている場合、これらを1つの金融機関の融資330万円にまとめる方法です。借入を1つにまとめることで毎月の返済期日が統一され、返済計画が立てやすく、管理が楽になります。
借り換え
借り換えとは、現在受けている融資を別の金融機関の新しい融資に切り替えることです。金利の低い融資へ借り換えれば、月々の返済額や総返済額を軽減できます。
6.資金繰りの根本改善に取り組む
一時的な対策だけでなく、長期的な視点で資金繰り体質を改善することが重要です。経営基盤の強化に向けた取り組みを進めましょう。
事業計画の見直し
市場や企業を取り巻く環境は絶えず変化しているため、計画通りに事業が進むとは限りません。予算は限られているため、定期的に経営計画を見直し、現状に合わせた修正を行うことが大切です。
3〜5年の中期計画と1年の短期計画を作成し、毎月または四半期ごとに進捗を確認することで、早期に問題を発見し対策を講じることができます。金融機関との交渉の際にも、具体的な改善計画を示すことで信頼を得やすくなります。
資金繰り表の作成
資金繰り表は、将来の収入と支出を予測し、資金の過不足を把握するための表です。資金繰り表を活用することで、資金繰りが厳しくなる状況を事前に察知し、必要な対策を講じることができます。
作成方法としては、エクセルなどの表計算ソフトを使って自作する方法と、クラウド会計ソフトの機能を活用する方法があります。
エクセルは自社の状況に合わせてカスタマイズしやすく、クラウド会計ソフトは入力の手間が省けます。それぞれのメリットを考慮して選びましょう。
資金繰りが厳しくなるとどうなる?資金ショートのリスク
資金繰りが厳しくなって懸念されるのが資金ショートです。資金ショートとは、支払いに必要な現金が不足し、給与や仕入代金、借入金の返済など期日までに支払いができなくなる状態です。
似たような概念として赤字や債務超過がありますが、資金ショートのほうが深刻です。
赤字は一定期間の支出が収入を上回っている状態ですが、手元に資金があれば即座に倒産するわけではありません。同様に、債務超過は負債が資産を上回る状態ですが、日々の支払いができていれば事業継続は可能です。
なお、資金ショートは黒字でも起こり得ます。売上は好調でも、回収が遅れていたり、急な設備投資で現金を使い果たしたりすると、支払いができなくなります。
そのため、利益と現金の流れは必ずしも一致しないことを理解し、常に資金繰り表で将来の資金状況を把握しておくことが重要です。
資金ショートの対策について以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもあわせてチェックしてみてください。
資金ショートを防ぐ対策6選!手元資金が不足する原因やリスクとは?
資金繰りが厳しい会社に見られる特徴・兆候とは
資金繰りが厳しくなる状況は、いくつかの状況が重なって起きるケースが多いです。ここでは、資金繰りが厳しい会社に見られる特徴・兆候を紹介します。
資金繰りの悪化を招く5つの要因 | 改善方法もわかりやすく解説
利益率が徐々に下がっている
資金繰りが厳しい会社に見られる特徴として、利益率が徐々に下がっているケースが挙げられます。
利益が減って手元に残るお金が減ってしまえば、日々の運転資金を確保することが難しくなります。支出が重なってしまった場合に対応できる余力がなくなり、ちょっとした資金需要にも対応できなくなってしまうでしょう。
売上が立っているからと安心せず、売上に対してどれくらいの支出が使われているかを確認することが重要です。
売掛金の回収が遅れがちになっている
売掛金の回収が遅れがちになっていると、売上は立っているのに、手元に資金がない期間が長くなります。入金サイクルが長くなる一方で、仕入先への支払いや人件費などの支出は予定通り発生するため、資金繰りが圧迫されてしまいます。
売上を上げることに注力しすぎて回収管理が疎かになるのは、資金繰りが厳しくなる企業の特徴です。
突発的な支出が重なってしまった
突発的な支出が重なってしまうこともあるでしょう。予期せぬ設備の故障や取引先の倒産による貸倒れ、災害による被害など、突発的な支出が重なると資金繰りが一気に悪化してしまいます。
こうした急な支出は予測が難しく、完全に防ぐことはできません。通常の運転資金とは別に、売上の2〜3ヶ月分程度の予備資金を確保しておくことが重要です。
使わない・売れ残った在庫が積み上がっている
使わない・売れ残った在庫が積み上がっているのも、資金繰りが厳しい企業の特徴の一つです。倉庫に売れ残った商品や使用予定のない原材料が山積みになっている状態は、すでに支出した現金が動かなくなっている状態です。
過剰在庫は日々の運転資金を圧迫する要因になります。「いつか売れるかも」「もったいないから取っておこう」という考えが、知らず知らずのうちに会社の資金を固定化させてしまいます。
資金繰り表が作られていない(形だけになっている)
「来月はいくら入ってきて、いくら出ていくのか」を予測した資金繰り表がないと、お金が足りなくなる危険を事前に察知できません。また、形だけ作って実際とかけ離れた数字を載せていても意味がありません。
そのため、週に一度、または月に一度、きちんと資金繰り表を更新しましょう。「これから3ヶ月くらいの間、お金はどう動くのか」をしっかり把握しておくことが、企業の資金繰りを健全に保つために重要です。
資金繰りが厳しいときにやってはいけないNG行動
資金繰りが厳しいと、一時的な資金不足を解消するために誤った判断をしてしまうことがあります。
しかし、その場しのぎの対応は、自社の状況をさらに悪化させてしまう恐れがあります。以下で、資金繰りが厳しいときにやってはいけないNG行動を見ていきましょう。
税金や社会保険料の支払いを後回しにする
経営が苦しくなると、事業に直接影響が見えにくい税金や社会保険料の支払いを後回しにしがちです。
しかし、滞納すると延滞税や加算税が発生し、最終的には財産の差し押さえにつながる恐れもあります。金融機関や取引先からの信用も失いかねません。
取引先への支払いを無視する
資金繰りが厳しいからといって、取引先への支払いを無視したり、連絡を断ったりするのも当然NGです。無視すると催促が厳しくなり、最終的には取引停止、訴訟、さらには取引先の間での悪評が広がるリスクもあります。
一度失った信用を取り戻すのは容易ではありません。早めに現状を伝え、支払い条件の変更や分割払いの相談をしましょう。
支払いの優先順位を見誤る
資金が限られている時こそ、何を先に支払うべきかの判断が重要です。短期的な圧力に屈して、クレームの多い取引先ばかりを優先したり、経営者個人の借入を会社の支払いより優先したりするのは危険です。
一般的には、手形の決済→人件費、仕入先への支払い→税金・社会保険料→銀行融資の返済といった順序が基本です。特に手形が不渡りになると取引停止処分となり、実質的な倒産状態に陥るため、最優先で対応する必要があります。
無計画に資金調達を行う
資金繰りに困ると、返済計画や使途を十分に検討せずに借入を行いがちです。しかし、無計画な借入は金利負担を増加させ、返済能力を超えた債務を抱える原因になります。
借入をする際は、必ず返済シミュレーションを行い、自社の返済能力を超えないことを確認しましょう。また、事業拡大のための借入と赤字補填のための借入は明確に区別して考える必要があります。
融通手形を発行する
融通手形とは、実際の取引がないにもかかわらず資金調達目的で振り出される手形です。資金繰りのために安易に融通手形を利用すると、支払期日に資金が用意できず不渡りとなるリスクが高まります。
不渡りが発生すれば、銀行取引停止処分となり、事業継続が困難になることも。現金回収が遅れる手形取引自体を減らし、直接入金の取引に切り替えることを検討しましょう。
違法業者との取引・借入を行う
銀行や公的機関からの融資が受けられないからといって、ヤミ金などの違法業者との取引・借入するのは止めましょう。違法な業者と取引すると、法外な利息を要求されたり、悪質な嫌がらせを受けたりするリスクがあります。
また、取引内容が不透明な業者との関わりは、知らないうちに違法行為に加担することになりかねません。どんなに資金繰りが厳しくても、違法な手段は絶対に避け、公的な相談窓口に助けを求めましょう。
ファクタリングって安全なの?悪徳業者を判別する方法もあわせて解説
資金繰りが厳しいときに活用できる「カード払いくん」とは?
請求書カード払いの「カード払いくん」は本来銀行振込で支払う予定の請求書をクレジットカードで決済できるサービスです。支払いが最大60日後になるため、その間資金を手元に残しておくことができます。
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振込名義を変更できるため取引先に知られずに利用でき、新たな借入をせずに資金繰りの安定化が図れます。急な支払いにも対応できるので、ぜひご検討ください。
資金繰りが厳しくても改善方法はある!原因を把握して乗り越えましょう
「資金繰りは企業の生命線」とわかっていても、どうしても厳しい状況に陥ることはあるものです。また事業を続けていく中で、予期せぬ支出や売上の変動が起こるかもしれません。
大切なのは、原因を正確に把握し、適切な対策を講じることです。入金を早める工夫や支払いの調整など、今日からでも始められる対策が複数あります。できることから始めて、資金繰りの改善に取り組んでいきましょう。