投稿日:2025.05.28 最終更新日:2025.06.04

ベンチャー企業の資金調達方法8選!メリットや注意点、事例も紹介

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    ベンチャー企業が成長していくうえで、資金調達は重要な課題です。革新的なアイデアがあっても、それを形にし、市場に広げていくための資金がなければ、事業の可能性を十分に発揮することはできません。

    しかし「どの調達方法が自社に適しているのか」「各資金調達方法のメリット・デメリットは何か」と悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。

    そこでこの記事では、ベンチャー企業の資金調達方法について挙げ、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。実際の事例も紹介しているので、これから資金調達を検討しているベンチャー企業の経営者は、ぜひ参考にしてみてください。

    ベンチャー企業の成長を左右する「資金調達」の重要性

    ベンチャー企業が革新的なアイデアを実現し、事業を拡大していくには、十分な資金が必要不可欠です。資金調達は、単にお金を集めるだけでなく、企業の成長スピードや競争力を決定づける重要な経営活動といえます。

    たとえば「優秀な人材を確保できない」「製品開発のスピードが遅い」といった課題も、資金調達によって解決できることは少なくありません。

    資金調達を成功させることで、優れた人材の獲得、設備投資の加速、マーケティング活動の強化など、事業拡大に必要な施策を実行できるようになります。投資家や金融機関からの信頼獲得にもつながり、次の成長ステージへとスムーズに進むことが可能になるのです。

    ベンチャー企業の資金調達方法8選

    ここでは、ベンチャー企業におすすめの資金調達方法を8つピックアップして紹介します。

    1.VC

    VC(ベンチャーキャピタル)は、将来性のあるベンチャー企業に投資し、株式公開やM&Aによる売却益を目指す投資会社です。資金だけでなく経営支援も行っており、急成長を目指す企業に適しています。

    VCのメリット

    VCは、ベンチャー企業の将来性や収益力を見込んで投資するため、銀行などの融資に比べて、実績や担保が少ない創業初期の企業でも資金調達できるケースがあります。

    VCからの出資は原則として返済する必要がありません。株式の一部と引き換えに大規模な資金調達が可能です。

    また、VCから投資を受けた実績は企業の信用力向上につながり、その後の資金調達や取引先の開拓が有利になります。さらに、多くのVCは業界の人脈や経営ノウハウを持っており、事業成長のための支援も期待できるでしょう。

    VCのデメリット

    VCからの出資を受けると、株式の一部を手放すことになるため、経営の自由度が制限される可能性があります。

    投資家は短期間での高成長とExit(IPOやM&A)を求めており、創業者のビジョンや事業計画と相反することもあるかもしれません。また、定期的な報告義務や取締役会の開催など、ガバナンス面での負担が増えます。

    2.エンジェル投資家

    エンジェル投資家は、創業初期のベンチャー企業に投資する個人投資家です。エンジェル投資家もVCと同じように、株式による配当や売却益で利益を得ることを目的としています。

    しかし、中には起業家を応援したいという想いや、自身の経験やノウハウを活かして次世代のビジネスに関わりたいといった動機から投資する人も少なくありません。

    エンジェル投資家のメリット

    VCと同様、エンジェル投資家からの資金調達は出資であり、返済義務が発生しません。事業実績がほとんどない創業初期段階でも投資してくれる可能性があり、アイデア段階からの資金調達が可能です。

    また、多くのエンジェル投資家は自身も起業経験があることから、経営のアドバイスを受けられたり、人脈を紹介してくれたりするなど、資金以外の面でもサポートを受けられるのはメリットといえるでしょう。

    エンジェル投資家のデメリット

    エンジェル投資家は個人で出資するため、億単位で出資するVCに比べると、出資額は1,000万円未満と低めであることが多いです。また、そもそも出資してくれるエンジェル投資家は多くないため、別の資金調達方法と併用する必要があるでしょう。

    なお、VCと同様に上場などの成長を期待するエンジェル投資家もいるため、事業方針について意見が対立することがあります。事前に投資家の考え方や期待するリターンについて確認しておくことが重要です。

    3.補助金・助成金

    補助金・助成金は、国や地方自治体、各種団体が政策目的のために企業に交付する資金です。IT導入補助金ものづくり補助金など、政策目的に応じた様々な補助金・助成金があります。審査に通過すれば、返済不要の資金を得ることができます。

    補助金・助成金のメリット

    補助金・助成金は原則として返済不要です。政策目的に合致した事業であれば、創業間もないベンチャー企業でも獲得しやすい資金源といえます。

    また、公的機関からの支援を受けた実績は対外的な信用にもなり、取引先や金融機関からの評価向上にもつながるメリットがあります。

    なお、審査に通過するためには事業計画をしっかり作り込む必要がありますが、その作成過程で事業の方向性を見直すきっかけにもなるでしょう。

    補助金・助成金のデメリット

    補助金・助成金は各省庁や自治体など様々な機関から提供されており、自社に合った制度を探すのに手間がかかります。申請書類の作成や報告書提出など事務作業の負担も大きいです。

    また、申請から採択、資金受給までに数ヶ月以上かかるケースが多く、急な資金ニーズには対応できません。さらに、後払い方式であり、いったん自社で費用を立て替える必要があります。

    4.日本政策金融公庫の融資

    日本政策金融公庫は、国が全額出資している政府系金融機関です。中小企業や創業間もない事業者を中心に、一般貸付や新規開業資金、企業活力強化資金など様々な種類の融資を行っています。

    なお、2024年4月1日以降、新規開業資金の自己資金の要件が撤廃され、自己資金がなくても融資が受けられるようになりました。ただし、あくまで自己資金がなくても申し込めるようになったとはいえ、自己資金は用意するに越したことはないでしょう。

    日本政策金融公庫の融資のメリット

    日本政策金融公庫の融資は低金利で受けられる点がメリットです。2%前後と低金利で、返済負担を抑えながら事業資金を調達できます。返済期間も設備投資なら20年以内(運転資金は10年以内)と、月々の返済負担も少なめです。

    また、民間の金融機関では実績不足を理由に融資が難しいケースでも、事業計画の内容次第で融資を受けられる可能性があります。

    無担保や無保証人の融資制度や創業前でも対象となる融資制度もあり、創業間もない企業や、これから起業する方にとっても有力な選択肢といえるでしょう。

    日本政策金融公庫の融資のデメリット

    日本政策金融公庫は、提出書類が多く、借入申込書や創業計画書、収支計画書など多岐にわたり、書類の準備に時間と手間がかかります。

    審査期間は1ヶ月以上と長く、すぐに資金を用意することはできません。急な資金需要に対応するのは難しいため、余裕を持った申請スケジュールを立てておく必要があるでしょう。

    また、一度審査に落ちてしまうと、原則として6ヶ月間は再申し込みができません。そのため、しっかり事業計画書を作り込んで、最初の申請で通過できるように準備することが重要です。

    5.自治体の制度融資

    制度融資とは、都道府県や市町村の自治体、信用保証協会、民間の金融機関が連携して実施している融資制度です。地域によって融資あっせん制度と呼ばれることもあります。

    自治体の制度融資のメリット

    自治体の制度融資は、通常の銀行融資に比べて受けやすいのがメリットです。信用保証協会が保証人となって融資を支援するため、創業間もない企業でも資金調達のハードルが低くなります。同様の理由で金利も低めです。

    信用保証協会には保証料を支払う必要がありますが、自治体によっては保証料の一部や全額を補助する制度も設けられています。

    自治体の制度融資のデメリット

    申請には自治体・信用保証協会・金融機関の三者が関与するため、手続きが複雑になりがちです。融資実行までの期間も長くなる傾向があり、資金繰りが逼迫している場合には間に合わないこともあります。

    また、地域ごとに内容が異なり、居住地や事業所の所在地によって利用できる制度が限られます。地域の自治体がどのような制度融資を実施しているか事前に確認しておきましょう。

    6.銀行の融資

    銀行融資は一般的な資金調達方法ですが、ベンチャー企業にとっては審査のハードルが高いことが課題です。しかし、事業が軌道に乗り始めた段階では重要な資金源となります。

    銀行の融資のメリット

    銀行融資は金利が低く限度額が大きいため、返済時の負担を抑えつつまとまった金額を借りやすいのが特徴です。実績や信用力に応じて数千万円〜1億円の資金調達が可能です。

    また、出資と異なり持ち株を渡す必要がないため、経営の自由度を維持したまま資金を調達できます。株式の希薄化を防ぎながら成長資金を確保できる点は、創業者にとってメリットといえるでしょう。

    銀行の融資のデメリット

    銀行融資では、財務基盤や収益性、事業の安定性などが重視されます。業歴や実績が浅いと審査に通りにくく、ベンチャー企業にとってハードルが高い資金調達方法です。なお、審査に通過できたとしても希望額を調達できるとは限りません。

    また、信用調査や書類確認には時間がかかり、融資が実行されるまでに1ヶ月以上かかることもあります。返済できなくなった場合のための保証として、担保や保証人が求められるのが一般的です。

    7.クラウドファンディング

    クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の支援者から資金を集める方法です。プロジェクト内容に共感した支援者から資金を募るため、マーケティングの側面も持ち合わせています。

    クラウドファンディングのメリット

    クラウドファンディングは、事業実績が少なくても、事業や商品への共感が得られれば資金を集められます。市場の反応も確認でき、製品開発や事業計画の検証にもなるでしょう。

    プロジェクトの掲載ページを通じて商品の訴求ができるため、広告・PRの一環として活用できます。

    クラウドファンディングのデメリット

    クラウドファンディングは目標金額を設定しますが、不特定多数の人から資金を集めるため、目標金額を達成できるとは限りません。

    目標金額を達成するためには、より多くの人に拡散してもらうための宣伝をしたり、リターンを企画・製作したりする必要がありますが、これらの準備には多くの時間と労力がかかります。

    8.ファクタリング

    ファクタリングは、入金前の売掛金をファクタリング会社に売却して資金化する方法です。通常の融資と比べて審査のハードルが低い資金調達方法として活用されています。

    ファクタリングのメリット

    ファクタリングは通常の融資と異なり、企業の信用力ではなく売掛先の信用力が重視されます。そのため、創業間もない企業、また赤字や債務超過の企業でも利用しやすいのがメリットです。

    審査から資金化まで非常に早く、最短数時間から数日程度で資金調達できます。また、融資と異なり借入ではないため、バランスシート上の負債になりません。

    ファクタリングのデメリット

    ファクタリング会社によって手数料の幅が大きいことがデメリットです。一般的な相場は1%〜18%で、売却する売掛債権によって手数料は変動します。手数料が高くなるほど、受け取れる金額が減っていってしまいます。

    そのため、複数のファクタリング会社を比較して手数料の低いファクタリングを利用することをおすすめします。

    Payなびでは、複数のファクタリング会社に一度に申し込みができるため、比較検討することで手数料を抑えられます。最短30分で審査完了、最短60分で資金化が可能です。支払いが遅れている方や赤字・債務超過の方でも利用できます。

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    ベンチャー企業における資金調達の注意点

    ベンチャー企業にとって資金調達は重要ですが、注意しておきたい点もあります。それぞれの資金調達を検討する前に確認しておきましょう。

    【出資の場合】自社の経営に介入される可能性がある

    VCやエンジェル投資家から出資を受ける場合、株式の一部を譲渡することになるため、経営に介入したり、意思決定に影響を与えたりする可能性があります。

    また、投資家への定期的な経過報告も行わなければいけません。月次や四半期ごとの業績報告だけでなく、事業計画の進捗状況や課題について報告する必要があるでしょう。

    一定の事務コストがかかることはもちろん、スムーズに報告するための体制整備も求められます。

    【融資の場合】利息を含めた元本の返済が必要になる

    融資は出資と違い、借入金に利息を加えて金額を返済しなければいけません。

    毎月の返済額は固定費として事業収支に影響するため、無理のない返済計画を立てることが重要です。特に創業初期は売上が安定しないことも多く、余裕を持った資金計画が必要でしょう。

    審査によっては資金を調達できない場合がある

    ベンチャー企業は事業が立ち上がったばかりで、売上や実績、将来性を示すためのデータがないことから、金融機関や投資家が企業を評価するのが難しくなります。

    このため、優れたビジネスモデルを持っていても、審査に通らないケースも少なくありません。特に銀行融資では、創業間もない企業への融資審査は厳しい傾向にあります。

    また、補助金・助成金は申請条件や採択枠が決められています。政策目的に合致した事業内容であることが前提となり、競争率が高い場合はその中で枠を獲得しなければいけません。

    書類作成や事業計画の精度を高めることが重要ですが、採択されないリスクも想定しておくべきでしょう。

    資金調達が完了するまで時間がかかるケースがある

    資金調達は申請から実際に資金を受け取るまでに時間がかかることを念頭に置く必要があります。融資は審査から実行まで数週間から数ヶ月程度かかるのが一般的です。

    補助金は採択後も実績報告を経て後払いとなるケースが多く、実際に資金を受け取るまでに6ヶ月〜1年程度かかることも珍しくありません。そのため、補助金だけに頼った資金計画では、事業の進行に支障をきたす恐れがあります。

    資金調達はタイミングを見極めることが重要です。資金が切迫してからの調達では選択肢が限られるため、余裕を持って計画的に進めていきましょう。

    ベンチャー企業の資金調達事例

    資金調達の理論だけでなく、実際の成功事例を知ることも重要です。ここでは、独自のビジネスモデルや革新的な技術で資金調達に成功したベンチャー企業の事例を紹介します。

    それぞれの企業がどのように資金を調達し、成長を加速させたのかを見ていきましょう。

    株式会社UPSIDER

    株式会社UPSIDERは、スタートアップ向けの法人クレジットカード事業を展開する企業です。

    従来の法人カードでは与信審査が厳しく、スタートアップが利用できないという課題に着目し、独自の審査基準を構築。資金調達額や成長性を指標にカード発行の可否を判断する革新的なアプローチが投資家の共感を呼びました。

    現在は数百社以上の企業に導入され、急成長を続けています。2024年11月には、総額154億円の資金調達を実施しました。

    株式会社SmartHR

    株式会社SmartHRは、クラウド型の人事労務管理システムを提供するベンチャー企業です。

    人事労務業務のデジタル化という明確な市場ニーズと、使いやすさを追求した製品開発が評価され、着実に事業を拡大させた事例として注目を集めています。2024年6月には、約214億円の資金調達を実施しました。

    株式会社TBM

    株式会社TBMは、環境問題解決に貢献する新素材「LIMEX」を開発したベンチャー企業です。

    石灰石を主原料とし、水や木材をほとんど使わずに紙の代替品を製造する革新的な技術で注目を集め、伊藤忠商事、ゴールドマンサックス、大日本印刷、凸版印刷、三菱鉛筆など大手企業からの出資を受けました。

    LIMEXは名刺・包装材・食品容器・メニュー表など多様な用途に活用され、10,000以上の企業や自治体・団体で導入実績があります。

    適切な資金調達戦略がベンチャー企業の成長を加速させる

    ベンチャー企業の成長には資金調達が欠かせません。本記事で紹介した8つの資金調達方法には、それぞれメリット・デメリットがあります。自社の成長段階や事業特性に合った方法を選択し、計画的に資金調達を進めていきましょう。

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