地方銀行や信用金庫・信用組合、ノンバンク、政府系金融機関など、さまざまな金融機関があるため、どこで融資を受けるべきか、迷っている法人事業主も多いのではないでしょうか?
金融機関ごとに審査の基準や通りやすさ、融資までのスピード、金利条件などが異なるため、正しい知識がないまま申し込むと「断られてしまった」「条件が合わなかった」といった事態にもなりかねません。
この記事では、融資を検討している法人の方に向けて、融資に通りやすい金融機関ランキングと、目的別おすすめの資金調達方法を紹介します。
融資に通りやすい金融機関ランキング
金融機関を融資が通りやすい順番に並べると、以下の通りとなります。
- ノンバンク
- 信用金庫・信用組合
- 日本政策金融公庫
- 地方銀行
- メガバンク
各金融機関の特徴、メリット・デメリットを紹介します。
第一位:ノンバンク
法人が融資に通りやすい金融機関を探す上で、候補に挙がるのがノンバンクです。ノンバンクとは預金業務を行わず、融資業務に特化した金融機関です。消費者金融や信販会社など、銀行以外の金融機関はノンバンクに該当します。
「銀行で断られた」「今すぐ資金が必要」といった場面でも、ノンバンクであれば審査が比較的やさしく、迅速に借入ができる可能性があります。ノンバンクの主な特長は以下の通りです。
ノンバンクのメリット
- 審査が通りやすい傾向にある:過去の実績が少ない法人や赤字決算でも相談に応じてもらえるケースがあるため、間口が広い。
- 資金調達までのスピードが速い:早ければ申し込み当日に融資が実行されることも。急ぎの資金ニーズにも対応。
ノンバンクのデメリット
- 金利が高め(年10〜18%前後):短期返済を前提とした利用が望ましく、長期的な資金調達には不向き。
- 融資限度額が小さい:大規模な設備投資などには適さない場合がある。
たとえば「急な仕入れでどうしても今日中に資金が必要」といったシーンでは、ノンバンクのビジネスローンが大きな助けになるでしょう。
ただし、金利負担を抑えたい方や、長期的な事業計画に基づいた融資を希望する法人にとっては、他の金融機関とあわせて比較・検討することが大切です。
第二位:信用金庫・信用組合
ノンバンクに次いで、融資に通りやすいとされるのが、信用金庫・信用組合です。
営利目的ではなく、地域経済の活性化や地域振興を目的としています。そのため、銀行に比べて敷居が低く、「まだ実績が浅い」「融資の申し込みが初めて」といった法人や事業者でも、話を聞いてもらえる傾向があります。
信用金庫・信用組合のメリット
- 審査が比較的柔軟:地元企業との信頼関係を重視するため、決算書の数字だけで判断されにくい
- 相談体制が手厚い:担当者が丁寧にヒアリングしながら、事業の成長段階に合った融資を提案してくれる
信用金庫・信用組合のデメリット
- やや高めの金利:銀行に比べると金利が上がることもある
- 全国対応ではない:地域外での事業展開を考えている場合は、融資やサポートの範囲が限定されることも
たとえば「地方銀行に断られてしまったけれど、地元で信頼できる金融機関に相談したい」と感じている方にとって、信用金庫・信用組合は非常に心強い存在です。
とくに、創業間もない法人や、地域での販路を拡大したいと考えている企業にとっては、親身で現実的な提案を受けられる可能性が高いでしょう。
第三位:日本政策金融公庫
法人が融資に通りやすい選択肢として、次に検討したいのが「日本政策金融公庫」です。日本政策金融機関は、国が100%株式を保有している政府系金融機関です。小規模事業者や創業したばかりの企業や農林水産業、中小企業への融資を通じて、地域経済の発展や利用者の成長支援を目的として設立されました。
日本政策金融公庫のメリット
- 無担保・無保証でも利用可能:保証人や担保がなくても借りられ、初めての法人にも利用しやすい。
- 金利が低く、返済負担が軽い:一般的に年1〜2%程度と、民間金融機関よりも低金利。
- 創業支援に積極的:創業計画や将来の見通しを丁寧に評価してもらえる。
日本政策金融公庫のデメリット
- 審査には面談がある:単なる書類審査ではなく、創業の動機や事業の見通しなどを口頭で説明する必要がある。
- 審査期間が長め:通常1ヶ月〜1.5ヶ月ほどかかることが多く、急ぎの資金には不向き。
「これから会社を立ち上げたい」「まだ実績がないが、計画には自信がある」という法人にとっては、日本政策金融公庫の融資は現実的な選択肢です。また、過去に民間金融機関で断られた経験がある法人でも、事業への想いと計画性があれば通過できる可能性があるのもポイントです。
第四位:地方銀行
地方銀行はメガバンクに比べると、地域密着型で地元の企業に対して親身に相談に乗ってもらえるため、中小企業や個人事業主にとっては心強い味方といえるでしょう。
地方銀行のメリット
- 金利が比較的低く、返済負担を抑えやすい:ノンバンクや信用金庫よりも低い金利で借りられるケースが多い(例:年1.5〜3%程度)。
- 法人向けの取引サービスが充実:融資だけでなく、振込・口座管理・外為取引など、ビジネスに役立つサービスが整っている。
- 地元の事情をよく理解している:地域事情や業種特性を加味して相談に乗ってもらえるのも安心材料。
地方銀行のデメリット
- 審査はやや厳しめ:信用金庫ほど柔軟ではなく、直近の業績や自己資本比率など、定量的な審査項目を重視する傾向。
- 営業エリア外では支援が限定される:本拠地以外の地域では店舗数が少なく、全国対応には向かない。
第五位:メガバンク(大手銀行)
メガバンクは全国に支店を持つ大手銀行です。圧倒的な資金を保有しているため、低金利で融資を受けられます。
しかし、メガバンクは主に大企業や上場企業をメインに行っており、個人事業主や中小企業への融資は控え目です。そのため個人事業主や中小企業は断られてしまう可能性が高いでしょう。
もし融資を受けるのであれば、信用保証協会の信用保証付き融資を利用するなど、申込方法を工夫しないと融資を受けるのは難しいかもしれません。
メガバンクのメリット
- 金利が非常に低い(例:年0.5〜1.5%台):他の金融機関と比べても優れた条件で借入ができる可能性がある。
- 高額の融資にも対応可能:設備投資や多店舗展開など、大型案件にも柔軟に対応。
- 全国どこでも利用できるインフラ体制:支店・ATM・Webサービスなどが充実しており利便性が高い。
メガバンクのデメリット
- 融資審査の基準が非常に厳しい:売上・利益の安定性、自己資本比率、財務体質などが細かくチェックされる。
- 中小企業や創業間もない法人は通りにくい:創業資金の相談や小口融資には消極的なことが多い。
「大規模な投資を検討している」「長期的な取引を見据えて信用力の高い銀行と関係を築きたい」といった場合には、メガバンクの活用はメリットがあります。
一方で、「とにかく早く借りたい」「過去に赤字決算がある」といったケースでは、他の金融機関を優先した方が現実的でしょう。
【目的別】おすすめの資金調達方法の選び方
法人が融資を検討する際は、「どこで借りるか」だけでなく、「どんな目的で借りるのか」も重要な視点です。金融機関は、融資の目的に応じてさまざまなタイプのローンを用意しており、それぞれ審査の通りやすさや条件も異なります。以下、目的別のおすすめ資金調達方法を整理しました。
融資の通りやすさで選ぶなら:ノンバンクのビジネスローン
融資の通りやすさを重視する事業主は、ビジネスローンを選びましょう。銀行、ノンバンクどちらでも取扱いがありますが、ノンバンクのほうが融資に通りやすい傾向があります。また審査が柔軟でスピードも早く、即日融資に対応しているケースも多数あります。ただし、利便性が高い分、金利は年10〜18%程度と高めになるため、注意が必要です。
金利の低さを重視するなら:銀行融資
低金利で借りて、総返済額を抑えたいときは銀行融資がおすすめです。
銀行融資はプロパー融資と信用保証付き融資があり、プロパー融資であれば、さらに低い金利で利用できます。
プロパー融資とは銀行と事業主が直接行う融資方法です。事業主が融資申込時に事業計画書や決算書を見て返済能力を確認し、金利や融資額、返済期間を決定します。
仮に債務者が返済不能になった場合、プロパー融資は銀行が損害を受けるため、審査は厳しくなります。
一方、信用保証付き融資は、信用保証協会が融資の保証を行う融資のことです。債務者が返済不能になった場合、信用保証協会が銀行に立て替え返済をします。銀行は貸し倒れリスクが回避できるため、信用保証付き融資のほうが、融資に通りやすくなります。
ただし事業主は信用保証協会に、所定の信用保証料を支払わなければなりません。また仮に返済不能になり、信用保証協会が銀行に立て替え返済をしたとしても、債務が無くなるわけではないため注意しましょう。
新規事業・創業の融資なら:日本政策金融公庫
創業期の法人や、これから事業を始める方にとっては、日本政策金融公庫の創業融資制度がおすすめです。新規事業は実績がなく、金融機関が返済能力を確認することが難しいため、審査に通りにくい傾向があります。
しかし日本政策金融公庫では、新規事業や事業を始めて間もない事業者向けの融資を用意しています。創業計画や将来性を重視した審査が行われるため、十分にチャンスがあります。
比較的低金利で利用できますが、申込書の他に創業計画書などの提出が求められ、審査は厳しめです。ただ新規事業の場合、低金利で融資を受けられるケースは少ないため、日本政策金融公庫の融資は有力な選択肢となるでしょう。
参考:個人事業主が通りやすい融資とは?審査基準・成功のコツを徹底解説! - タックスナップ
法人が融資を通りやすくするポイント
金融機関から少しでも有利な条件で融資を受けるために、融資を通りやすくするポイントも押さえておきましょう。法人が融資を通りやすくするポイントは、説得力のある事業計画書を作る、日本政策金融公庫の創業融資を活用する、認定支援機関の活用の3つです。
説得力のある事業計画書を作成する
融資の審査では、決算書で財務状況を見るだけでなく、今後の事業の収益性も含めて返済能力を判断します。その判断材料となるのが、事業計画書です。事業計画書とは、事業内容や戦略、収益見通しなどをまとめた書類のことです。内容に信頼性と現実性があり、金融機関に「この会社なら返済できそうだ」と前向きに評価してもらえれば、審査に通る可能性が高まるでしょう。
具体的には以下のような項目を記載します。
- 企業の概要(設立年・代表者・事業の目的 など)
- 市場規模・競合他社の状況(業界の動向・競合他社との違い)
- 自社の強みや商品・サービスの特徴
- マーケティング戦略(ターゲット・販促手法・販売チャネル)
- 資金調達の計画(今回の融資額・資金使途・返済計画)
- 損益計画・見通し(売上・費用)
- 事業展開スケジュール・人員計画
「なぜこのタイミングなのか」「いくら必要なのか」「この融資でどう売上が伸びるのか」を明確にし、数字の裏づけと一貫性を意識して構成しましょう。
決算書を整える
決算書が赤字であると、融資を断られる可能性が高くなります。金融機関は、財務状況の健全性を重視するため、収支がマイナスであれば返済能力に疑問を持たれるからです。
とはいえ、直近の決算が赤字であった場合でも、必ずしも融資が不可能になるわけではありません。
たとえば、一時的な設備投資や仕入の増加による赤字であれば、翌期以降の収益改善見込みを説明することで理解を得られるケースもあります。
また、債務超過に陥っていないこと、つまり「資産が負債を上回っている状態」であることを示せれば、財務の安定性を評価してもらえる可能性があります。
融資を通りやすくするためには、単に黒字かどうかにとどまらず、赤字の理由を明確にし、改善に向けた具体的な計画を合わせて伝えることが大切です。決算書は金融機関に対する“経営の通信簿”でもあるため、普段から帳簿の精度や開示の姿勢にも気を配っておきましょう。
日本政策金融公庫の創業融資を活用する
もし創業間もない場合や、まだ事業実績が浅い場合は、民間の金融機関よりも日本政策金融公庫の創業融資を検討しましょう。日本政策金融公庫は政府系の金融機関で、創業者や中小企業の支援に積極的です。
無担保・無保証での融資も可能で、金利も年1〜2%台と比較的低めに設定されています。日本金融公庫の審査を通過できたという事実があると、民間の金融機関の融資時の審査で高い評価が得られる可能性があります。
創業融資といっても、日本政策金融公庫の新規開業資金や新事業育成資金は、事業を始めてからおおよそ7年以内であれば利用可能です。
認定支援機関(経営革新等支援機関)を検討する
審査や自分ひとりでの準備に不安を感じる場合は、認定支援機関を通して、日本政策金融公庫に申し込むのも一つの方法です。認定支援機関とは、経営に関する専門知識や実務経験があると国が認定した機関や、専門家を指します。具体的には商工会や商工会議所、税理士、弁護士、中小経企業診断士などです。
認定支援機関を通して申し込むことで、審査に通りやすくなる他、金利が優遇される、融資限度額が大きくなる可能性があるなどのメリットがあります。
金融機関との関係性を日頃から築いておく
融資は「取引実績」がある法人のほうが通りやすい傾向があります。
日ごろから銀行口座を活用したり、定期的に相談に訪れたりすることで、金融機関との信頼関係が育ちやすくなります。
- 振込・決済などで取引実績を作る
- 定期的に業績報告を行う
- 決算書は毎期提出し、透明性を保つ
まとめ
法人が融資を受ける際、最も審査に通りやすい金融機関はノンバンクで、それ以降は、信用金庫・信用組合、日本政策金融公庫、地方銀行、メガバンクと続きます。
ただし審査に通りやすい金融機関は、金利が高い、融資限度額が少ないなどデメリットもあるため、融資の通りやすさだけで金融機関を選ぶのは適切ではありません。
また審査に通りやすい、金利が低い、新規事業の融資を受けたいなど、融資を受ける目的で選ぶべきローンが異なります。
各金融機関やローンの特徴を理解して、自身に合ったものを選びましょう。