ファクタリングとでんさい割引は、どちらも売掛債権を支払期日前に資金化できる方法です。ただし、契約の仕組みや審査対象、売掛先が支払不能になった場合の責任は異なります。
また、2026年1月に中小受託取引適正化法(取適法)が施行され、対象取引で電子記録債権を支払手段として利用する場合のルールが変わりました。本記事では、両者の違いと、自社に合う方法の選び方を解説します。
ファクタリングとは
ファクタリングとは、支払期日前の売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらえるサービスです。数ヶ月先の売掛債権を現金化できることから、資金繰りの改善や急な資金需要に対応することが可能です。ファクタリング会社はこの取引の手数料から収益を得ています。
ファクタリングは、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングに分けられます。
2社間ファクタリングとは
2社間ファクタリングとは、売掛金を持つ利用者とファクタリング会社の2社間で直接取引が行われる形態です。
2社間ファクタリングでは、売掛先にファクタリングの事実が知らされることはありません。手続きがシンプルで迅速な資金調達が可能ですが、手数料が高めに設定される傾向があります。
2社間ファクタリングについては、2社間ファクタリングとは?違法性や3社間ファクタリングとの違い、利用するメリットを解説で詳しく解説しています。
3社間ファクタリングとは
3社間ファクタリングとは、売掛金を持つ利用者、ファクタリング会社、そして売掛先の3社が関与する取引形態です。3社間ファクタリングでは、ファクタリングの利用が売掛先に通知され、売掛先がファクタリング会社に直接支払いを行います。
資金調達までの時間は遅くて1週間かかる場合がありますが、手数料は2社間ファクタリングに比べて、低く設定されることが多いです。3社間ファクタリングについては、「3社間ファクタリングとは?具体的な流れやメリット・デメリット、利用がおすすめのケースを解説」で詳しく解説しています。
でんさい(電子記録債権)とは
でんさい(電子記録債権)とは、従来の手形や振込みに関連する問題を解決するために開発された電子決済手段です。2008年12月に施行された電子記録債権法によって導入されました。債権情報をデジタル化することで、オンライン上で債権の譲渡が完了する仕組みです。
でんさい割引とは
でんさい割引は、電子記録債権を金融機関や手形割引業者に譲渡し、支払期日前に資金化する方法です。既存の手形割引に比べて、コストの削減や紛失リスクの低減が可能になります。
ファクタリングとでんさい割引の違い
ファクタリングとでんさいはしばしば混同されますが、いくつかの違いがあります。ファクタリングとでんさい割引の違いについて、以下の表にまとめました。
| 比較項目 | ファクタリング | でんさい・でんさい割引 |
|---|---|---|
| 仕組み | 売掛債権をファクタリング会社へ売却 | 電子記録債権を発生・譲渡し、必要に応じて金融機関で割り引く |
| 主な目的 | 売掛金の早期資金化 | 企業間決済の電子化、債権の譲渡・割引 |
| 主な審査対象 | 売掛先、債権内容、取引実態 | 利用企業と取引先。割引時は金融機関所定の審査 |
| 資金化の速さ | 最短即日に対応する会社もある | 金融機関への申込みと審査が必要 |
| 費用 | ファクタリング会社所定の手数料 | 金融機関所定の利用料・割引料 |
| 取引先の関与 | 2社間は原則承諾不要、3社間は通知・承諾が必要 | 支払側・受取側の双方が利用できる必要がある |
| 未回収時の負担 | 真正な債権売買で償還請求権がなければ、原則としてファクタリング会社が負担 | 割引・譲渡の条件により、譲渡企業が請求を受ける場合がある |
※手数料や審査期間は会社・金融機関・契約条件によって異なります。固定的な相場だけで判断せず、見積もりと契約内容を確認してください。
2026年施行の取適法で変わったこと
2026年1月1日、下請法は中小受託取引適正化法、通称「取適法」へ改正されました。すべての企業間取引に一律適用されるのではなく、資本金または従業員数と取引内容によって対象が決まります。
対象取引では手形払いが禁止されました。電子記録債権や一括決済方式についても、支払期日までに代金相当額の現金を受け取ることが困難な方法は認められません。受取企業が割引をしなければ支払期日に現金を得られない場合は、支払側が割引料を負担しても、通常は問題になると公正取引委員会が示しています。
また、電子記録債権の受取手数料やシステム手数料を、中小受託事業者へ負担させることも原則として認められません。でんさい自体が利用禁止になったわけではありませんが、支払期日、満期日、費用負担を取適法に沿って設計する必要があります。
それぞれの項目について詳しく解説します。
手数料
ファクタリングの手数料はファクタリング会社が定め、でんさい割引の利用料・割引料は金融機関が定めます。費用は契約形態、債権内容、支払期日までの期間、審査結果などによって異なるため、見積もりと契約条件を確認しましょう。
審査対象
ファクタリングの審査では、売掛先の信用度や債権の質が主に評価され、売掛金を確実に回収できるかどうかが重要視されます。一方で、でんさい割引の場合は、債権の信用力だけでなく、利用者自身の財務状況も審査の対象です。
ファクタリングの審査について詳しく知りたい方は、ファクタリングの審査は甘いのか?審査基準や審査落ちする原因、通過率を上げるためのポイントを解説も参考にしてみてください。
契約の手間
ファクタリングでは、利用の都度、ファクタリング会社との間で売掛債権の譲渡契約を結びます。でんさいの利用には、取引金融機関との利用契約や所定の設定が必要です。でんさい割引を利用する際も、金融機関への申込みと審査が必要になります。
取引先への通知
ファクタリングでは、2社間ファクタリングの場合、取引先に通知する必要はありません。でんさい割引は取引先に通知する必要はありませんが、利用が電子記録に残ります。
未回収リスクの責任
真正な債権売買で償還請求権のないファクタリングでは、原則としてファクタリング会社が未回収リスクを負います。でんさい割引では、割引や譲渡の条件により、取引先が支払不能になった際に譲渡企業が金融機関などから請求を受ける場合があります。
運営機関
ファクタリングはファクタリング会社を通じて行われます。対して、でんさい割引は株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)を介して行われます。でんさいネットは全国銀行協会が設立した機関であり、金融機関が主な窓口です。
ファクタリングを利用するメリット
ファクタリングを利用するメリットを紹介します。
申込から入金までの時間が早い
ファクタリングは、売掛金を現金化するまでのプロセスが迅速です。銀行融資のように長期間を要することなく、申し込みから現金化までが最短即日で資金調達することが可能です。ファクタリングサービスを利用することで、利用者は資金繰りの改善を図れます。
即日で利用できるファクタリングについて詳しくたい方は、即日入金可能なファクタリングサービス5選|メリットや注意点、選び方のポイントを紹介
赤字経営でも利用できる
ファクタリングの審査では、売掛先の信用力が重視されます。規模の大きい売掛先や取引歴の長い売掛先であれば、利用者の財務状況が赤字であっても資金調達が可能です。
未回収リスクを移転できる
真正な債権売買で償還請求権のないファクタリングでは、原則として未回収リスクをファクタリング会社へ移転できます。売掛先が支払不能になった場合の責任について、契約前に償還請求権や買戻し義務の有無を確認してください。
ファクタリングを利用する際の注意点
ここでは、ファクタリングを利用する際の注意点を紹介します。
手数料は高い傾向にある
ファクタリングを利用するには手数料がかかります。手数料はファクタリング会社、契約形態、債権内容などによって異なるため、固定的な相場だけで判断せず、見積もりと契約条件を確認してください。
手数料が高すぎると受け取れる金額は減ってしまいます。ファクタリングの利用を検討するのであれば、手数料が妥当であるかを考慮する必要があります。
手数料が低いファクタリング会社を知りたい方は、ファクタリングにかかる手数料はどれくらい?安く抑える方法や手数料が低めのサービスを紹介もチェックしてみてください。
売掛先との取引に影響を与える可能性がある
2社間ファクタリングの場合は取引先への通知は不要ですが、3社間ファクタリングでは、取引先へ通知・承諾を得る必要があります。
そのため、売掛先が資金調達の事実を知られると、売掛先から「資金繰りが悪いのか?」と見なされ、今後の取引関係に影響を与える可能性があります。
悪徳業者に遭遇する恐れがある
ファクタリングには多くの業者が存在しており、中には不透明な手数料設定や不当な契約条件を提示する悪徳業者も存在します。ファクタリングを利用する際は、業者の選定に十分注意し、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
悪徳業者を判別する方法については、ファクタリングって安全なの?悪徳業者を判別する方法もあわせて解説を参考にしてみてください。
でんさい割引を利用するメリット
でんさい割引を利用するメリットを紹介します。
印紙代がかからない
紙媒体の手形割引では、収入印紙を貼る必要があり、印紙代がかかります。でんさい割引を利用することで取引が電子化されるため、紙の手形や請求書にかかる印紙代がかかりません。紙で保管する必要がなくなるため、オフィスのペーパーレス化も進められます。
紛失・盗難のリスクを防げる
でんさい割引では、紙媒体の手形を電子化してデータ上で管理しているため、紛失・盗難のリスクを防げるのもメリットです。ただし、でんさい取引はデータでの取り扱いとなるため、インターネットのセキュリティを強化する必要があります。
決済業務を電子化できる
でんさいを導入すると、債権の発生や譲渡などの手続きを電子化できます。ただし、利用開始には取引金融機関との利用契約や設定が必要で、支払側・受取側の双方がでんさいを利用できることも確認しなければなりません。
でんさい割引を利用する際の注意点
でんさい割引を利用する際の注意点を紹介します。
審査の難易度は高い傾向にある
でんさい割引は金融機関が審査を行うことから、審査基準は厳しい傾向にあります。売掛債権の信用力だけでなく、利用者の経営状況や財務状態などもチェックされます。そのため、赤字経営や債務超過など自社の経営が良くない場合は、審査に通るのが難しくなるでしょう。
利用者と取引先双方ででんさいネットを利用する必要がある
でんさい割引を行うためには利用者だけでなく、取引先もでんさいネットに登録している必要があります。でんさい割引は、電子記録債権のシステムを通じて取引が行われる取引です。双方が利用していないと、でんさい割引を利用することができません。
支払不能時に請求を受ける場合がある
でんさい割引では、取引先が支払不能になった場合、割引・譲渡の条件によっては譲渡企業が金融機関などから請求を受けることがあります。契約前に、支払不能時の責任や買戻しに関する条件を確認しましょう。
ファクタリングとでんさい割引どちらにすべき?選ぶ基準
ファクタリングとでんさい割引どちらを利用するかは、自社の業況や資金調達ニーズによって異なります。ここでは、ファクタリングとでんさい割引を選ぶ際の基準を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
急ぎの資金調達や未回収リスクの移転を重視する場合は、ファクタリングが候補です。一方、継続的な決済業務の電子化や紙の手形からの移行を重視する場合は、でんさいが適しています。
確定した売掛債権を早期資金化したい場合は、Payなびで複数のファクタリング会社を比較し、手数料だけでなく最終的な手取り額と契約条件を確認しましょう。
すぐに資金調達したい
すぐに資金調達したい場合は、ファクタリングがおすすめです。ファクタリングは即日の資金調達に対応しており、急な資金繰りに活用できます。
自社の信用情報に不安がある
自社の信用情報に不安がある場合は、ファクタリングがおすすめです。でんさい割引は金融機関が行うため、自社の財務状況や信用情報も審査の対象となります。
一方ファクタリングでは、売掛先の信用度が主に審査されるため、自社の信用情報に不安がある場合でも利用しやすいです。
安全に資金調達を行いたい
安全に資金調達を行いたい場合は、でんさい割引がおすすめです。ファクタリング業者の中には悪徳業者がおり、安全に利用するためには慎重に検討しなければいけません。でんさい割引は金融機関が提供していることから、安心して利用できるでしょう。
手数料を可能な限り抑えたい
費用を抑えたい場合は、ファクタリング会社と金融機関からそれぞれ条件を確認して比較しましょう。手数料や割引料は会社・金融機関・契約条件によって異なり、資金化の速さや未回収時の責任も含めた判断が必要です。
売掛先に知られることなく資金調達したい
売掛先に知られることなく資金調達したい場合は、ファクタリングが適しています。でんさい割引は電子記録に残るため、取引先に利用が知られてしまう可能性があります。
対して2社間ファクタリングは、売掛先に債権の譲渡を通知する必要がありません。そのため、売掛先との信頼関係に影響を与えたくない場合にもおすすめです。
未回収リスクを避けたい
未回収リスクの移転を重視する場合は、真正な債権売買で償還請求権のないファクタリングが候補です。でんさい割引は、割引・譲渡の条件によって譲渡企業が請求を受ける場合があります。
ファクタリングでも契約内容によって扱いが異なるため、償還請求権や買戻し義務の有無を契約前に確認してください。
効率よく自社に合ったファクタリングを探すなら「Payなび」
自社に合ったファクタリングを効率よく探したい方は「Payなび」の活用がおすすめです。「Payなび」では、請求書と入出金明細(直近3ヶ月分)の2つを用意するだけで、複数社に一括申し込めます。仮審査に通った会社の中から、手数料や入金スピードなどの条件を見比べて、自社に合ったファクタリングサービスを選ぶことが可能です。
また、ファクタリング会社の登録の際に独自の審査を行い、違法の疑いがある業者は排除しています。優良のファクタリング会社のみと契約できるので安心です。
まとめ
ファクタリングは売掛債権を売却して期日前に資金化する方法、でんさいは電子記録債権を用いた決済・譲渡の仕組みです。資金化の速さ、審査対象、費用、未回収時の責任は会社・金融機関・契約条件によって異なります。見積もりと契約内容を確認し、自社の目的に合う方法を選びましょう。
※法律・税務・会計上の判断は、取引金融機関や弁護士・税理士などの専門家へご確認ください。




